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「クソっ!出血が止まらねぇ!」
処置室に入ると、意識のない彼女を前に、血の付いた救命衣を着た綿貫医師が格闘している姿が見えた。
「綿貫先生、大丈夫ですか?」
処置用のゴム手袋を付けながら問うと、彼は肩を竦めた。
「見ての通りだ。胎児は摘出したんだが、出血が止まらない。子宮を摘出するしかねぇな」
「分かりました。輸血準備お願いします」
頷くと、私は近くにいたナースに声をかける。
輸血を待っている間、綿貫医師がやれやれ、というように溜め息を吐いたのが分かった。
「このお嬢さんも可哀相にな。まぁ、生まれてこれていたとしても、無事に育ったかは怪しいがな」
「そうですね」
それについては同感だ。
おそらく、これは先程拾った薬剤ケースの中身によって引き起こされたもの。そして、それを飲ませたのはおそらく彼女の夫だろう。
いくら盲目になっているとはいえ、この体たらくでは無事に生まれたとしてもその後は悲惨な結果になっていたに違いない。
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