La mia cara

34/44
前へ
/470ページ
次へ
「愛だの恋だのは、ロクな結果をもたらしませんね」 「・・・」  思わず呟くと、綿貫医師が驚いたような顔でこちらを見る。 「お前、さっきお姫様がどうたらとか言ってなかったか?」 「ああ、そうですね。確かに彼女は私の特別ですが、恋愛感情を抱いているか、と聞かれればそれはまた別の話です」  そう告げると、綿貫医師の顔が強張っていくのが分かった。 「?どうかしましたか」 「いや。・・・因みにお前、今まで恋人とかはいたことあるのか?」 「は?ああ」  誤魔化すような彼の咳払いに、自分の過去を思い返す。  水月の件以来、周囲に無関心でいた自分にとってはあまり縁のない話だ。  強いて言うなら・・・ 「・・・よく分かりませんが、性欲処理のお相手ならいましたので、あまり不都合はありませんでしたよ?」  その時の彼の顔は、しばらく忘れられない代物だった。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加