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「輸血、準備できました!」
微妙な空気を打ち消すような、ナースの声がその場に響く。
「おう!そんじゃ行くぞ、碧」
綿貫医師も処置モードへと代わったので、私もそれに倣った。
***
「奥様の子宮は胎盤剥離を起こし、出血が止まらない状態でした。よって、子宮全摘の処置を行い、今は麻酔で眠っています。胎児の方は、残念ながら流産でした」
私がそう夫に告げた時、彼は落胆するどころか、意味の分からないニヤニヤ笑いを浮かべていた。
「へぇ」
自分の隣にいた宮城医師が何か言いたそうな顔になっているのを、私は無言で静止した。
「それで、病院はどう責任をとってくれるんですかね?」
男は歪んだ笑みをこちらに向けている。どう考えても、自分の子供のことを気にしている様子は見られなかった。
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