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・・・おそらく、この男は自分の面子をつぶされたことが許せないのだろう。だから、代わりに薬を使って妻の体調を損ない、その責任をこちらに押し付けようとした。
新しく生まれてくる命を、何だと思っているのか。
許せない
何かに耐えるようにしてこぶしを固く握り、それと同時にポケットに入っている錠剤のケースを机の上に置く。
「その前に、少し宜しいでしょうか?」
「・・・」
注意深く発したその声に、目の前の彼は瞳に怪訝な色を映す。
「これは、奥さんの病室で見つけたものです」
「それが何か?病院で出した薬でしょう?」
あくまで男は平然として訊ねるが、この薬を病院で出す筈はなかった。
「残念ですが、こちらの薬はウチの病院では処方した記録はありません。
この『ホエイ』という薬は、抗マラリア剤ですから」
そう告げた時、男の顔が醜く歪んだ。
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