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・・・あれは、ナースではない。あの人は
「院長、出張から戻ったのね」
「そのようですね」
隣の宮城医師の言葉に同意しながらも、私は逸る心を宥める。
「五月蝿い!動くな!!」
逆上し、カッターを手にした男の腕の中にいるのは、院長秘書であり私が『お姫様』と称した人物その人だった。
「・・・何がしたいんですか?」
粗い息を吐く男を宥めるように、冷静な声がその場に響く。
「・・・」
声の主は、捉えられている筈の女性だった。
若干呆れたような彼女に、その場にいた全員の視線が集まる。
それをものともせずに、彼女はバカにしたような笑いを浮かべた。
「こんなものを掲げて。貴方は、これがどういうことを意味するのか、分かっているんですか?」
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