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あの後、救命センター内は騒然となったが、彼女のお陰で押田氏は捉えられ、十分後には患者を受けていた。
秘書である彼女は、出血多量で一時はショック状態になったが、素早く処置したため、大事には至らなかった。
「相変わらず、無茶するな。あのお嬢さんは」
処置を終え医局に戻ってきた綿貫医師は、苦笑いしながらそう呟いた。
「大丈夫か?碧」
更に、彼は私の顔を覗く。
・・・そんなに、酷い顔をしているのだろうか。自分は。
「大、丈夫 です」
とりあえずはそう答えると、綿貫医師は肩を竦めた。
「無理すんな。頸動脈からの出血は、結構凄いしな。
いくら処置で見慣れてても、結構堪えるだろ」
「はぁ・・・」
自分は、そこまでヤワな人間ではない。
だが、このどうにも言い表せない感情を説明する気にもなれず、曖昧に微笑んだ。
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