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私を助けた彼女は院長の姪であり、普段はアメリカのペンシルベニアにいるらしい。
歳は十一。そのくせ、去年ハーバード大学を卒業し、FBI に入った超エリート。専門は、心理学とか言っていたか。
歳に似合わぬ外見とどこか不安定さを兼ね揃えたその少女は、検査入院を兼ねて来日したらしく、私とも屋上で会うことが度々あった。
そして、大抵そういう時は歌っていた。
「何の歌?」
「モーツァルトの『子守唄』」
「へぇ。何でまた」
「ここが、この病院では一番『天国に近い場所』だからかなぁ?」
寂しそうにそれだけ告げる彼女に、一瞬ドキリとしたことを覚えている。
「それよりさ」
そのくせ、次の瞬間にはそんなことはなかったかのように話かける。そして、そういう時は大抵こちらの確信に迫ることだった。
「この間のあれって、過呼吸発作だよね」
「・・・」
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