Diva solare

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***  私を助けた彼女は院長の姪であり、普段はアメリカのペンシルベニアにいるらしい。  歳は十一。そのくせ、去年ハーバード大学を卒業し、FBI に入った超エリート。専門は、心理学とか言っていたか。  歳に似合わぬ外見とどこか不安定さを兼ね揃えたその少女は、検査入院を兼ねて来日したらしく、私とも屋上で会うことが度々あった。  そして、大抵そういう時は歌っていた。 「何の歌?」 「モーツァルトの『子守唄』」 「へぇ。何でまた」 「ここが、この病院では一番『天国に近い場所』だからかなぁ?」  寂しそうにそれだけ告げる彼女に、一瞬ドキリとしたことを覚えている。 「それよりさ」  そのくせ、次の瞬間にはそんなことはなかったかのように話かける。そして、そういう時は大抵こちらの確信に迫ることだった。 「この間のあれって、過呼吸発作だよね」 「・・・」
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