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その点、彼女の病室は院長室の一つ下のフロアー所謂特別室にある分 ウイルスからは隔離された場所だった。
「一応、あの子は心マなんかも手馴れてるハズだしね」
「はぁ」
そういう意味でも、何か起こった時の構えは万全ということか。
そのあざとさに半ば呆れていると、何故か院長は楽しそうにこちらを見る。
「そういうことだから、気になるなら覗いてくれば?」
「は?嫌ですよ」
顔に『楽しそう』って書いてありますよ
言外にそう仄めかすが、院長は尚も食い下がる。
「だって、気にならない?あの子が、彼の徘徊をどうやって止めたのか」
・・・本音はそこですか
「あの子、太陽とは元から知り合いだった っていうし」
「・・・」
ともすれば、出歯亀めいた発言に呆れながら私は観念して溜め息を吐く。
「・・・分かりました」
「よかった。あの子、絶対音感を持ってる上に、FBI でそれ用の訓練を受けてきたらしくて、私だと気付かれそうなのよね」
は?
思いもよらぬ発言に、目が丸くなる。
「じゃあ、さっそくヨロシクね」
嬉しそうにそう告げる院長の顔を、これほど恨めしく思ったことはなかったかも知れない。
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