Diva solare

18/52
前へ
/470ページ
次へ
***  その日以来、私は院長に命じられ、彼女達の病室に検温という名目で様子を見に行く役割を仰せつかった。 「そう言えば、桜っていつ咲くの?」    太陽がそう言い出したのは、確か一週間程経った日の朝食後だったと思う。  いくら暦の上では春とはいえ、二月に桜は咲かない。 「だいたい、三月の終わりから四月にかけてね」 「本当かよ・・・」  そんな風に落ち込まれても、私は花咲か爺さんではないので、困る。 「そんなに見たかったの?」 「・・・日本には、桜を見に来たんだ」  がっくりと肩を落とす太陽を見て、日生は何か考え込むような仕草を見せた。 「そんなに、見たい?」 「Sure(当たり前)!」 「・・・そっかぁ」  ・・・ちょっと待って  嫌な予感がする中で、彼女の口元が弧を描いていくのを確認する。  何をする気?
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加