Diva solare

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***  二人が伊豆へと旅立ったのはそれから二日後のことだった。 「あら。寂しい?」  いつも通りに院長室でスケジュールの確認をしていると、院長にそう聞かれる。  からかっているのは明確なので、私はやれやれと溜め息を吐いた。 「そうですね」  一言だけそう返すと、肩を竦める。 「というか、何事もないといいんですが」  寂しさより懸念の方が勝る今の心境を端的に表すと、院長からは意外そうな表情が返ってきた。 「貴女がそこまで他人を気に掛ける、っていうのも珍しいわね」  ・・・ 「あの二人は、子供ですから」  確かに、私は大して他人に興味はない。が、その言い方だと私が冷血人間のようではないか。  若干居心地に悪い思いでそう返すと、院長は笑う。 「いい傾向だと思うわよ。人間社会は、どんなに頑張っても一人じゃ成立しないわけだしね。  如何に周囲に手を貸し、借りて生活を成り立たせるか、っていうのも大切なことだと思うわ」
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