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***
結局、彼女達が帰ってきたのは八時を過ぎてのことだった。
消灯時間は九時なので、ギリギリといったところか。
「ただいま、槙さん」
「タダイマ」
そう言った二人は嬉しそうで、手なんか繋いでいる。
・・・
「幸せそうね。貴方達」
「だって、太陽って気の向くままにフラフラどこかにいっちゃうんだもん」
いかにも尤もらしく言う日生とは対称的に、太陽は即座に手を離した。
ま、いいけど
「日生ちゃんにお客様が来てるわよ」
「へぇ」
「そういうわけだから、院長室へ行ってもらえる?」
「了解。じゃあ後でね、太陽」
そう頷くと、日生は病室を出ていく。
私がそれを追うと、病室の前で待っていた彼女は私を見て肩を竦めた。
「槙さん、太陽についててくれる?
今日、結構歩いて体力消耗したと思うんだよね」
ああ。そうなのね
頭の中に、昼間の院長の言葉がよみがえる。
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