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『もう太陽は永くないの』
彼女もそれは知っている。それを実感として理解した。
「分かった」
「ありがとう」
言い様のない感情にかられたまま頷くと、彼女は笑う。その笑顔に、また得体のしれない感情が沸き上がってきた。
「ねぇ」
「何?」
「辛くはないの?」
その言葉を口にしてから『しまった』と思う。
同時に、その焦燥感がどこからくるのかを理解した。私は、死に行く父を見送るしかできなかった自分とこの子を重ねてしまっているらしい。
しかし、彼女は柔らかく微笑む。
「この地球上で、温かいベッドの上で死んでいける人間が、何人いると思う?」
「・・・」
返ってきたのは、思いもよらぬ答えだ。
「太陽と初めて会ったのは、ペンシルベニアの警察病院だったよ。
虐待の被害にあって、運ばれてきたのが彼だった」
だから、そのまま死んでいくよりは良かった、とでも言うつもりだろうか。
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