351人が本棚に入れています
本棚に追加
「『逃げる』っていう選択肢は『=死』しかなかった人だから、最期の在り方くらいは選ばせてあげたいと思うよ。
そこにいる役割を仰せつかったのが私なら、それは幸運なことなんだと思う」
「・・・」
彼女の中では、死は終わりではなく解放らしい。
あまりにも悲しいその結論に、釈然としない思いを凌駕する程の寂しさとやりきれなさが襲った。
「貴女は、それでいいの?」
「無い物ねだりはしない主義なんだよね、私」
そう言って意味深な笑みを見せると、彼女は歩き出す。
そんな彼女にかける言葉などあろうはずもなく、私は病室へと戻った。
最初のコメントを投稿しよう!