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彼女が戻ってきたのは、それからしばらく経ってからだった。
「や。タダイマ」
笑いながらそう言うと、彼女は太陽を見る。
「どうしたの?太陽」
太陽の変化にも目ざとく気付いた彼女は、そう言って彼の元に向かった。
「ちょっと挨拶しただけだから、大丈夫よ」
彼の怯えの理由は嫌という程分かっているのか、彼女はそう言って彼の横に座る。
了承の意を示すように、並んだ彼女の肩に太陽は頭を預けた。
随分な変わり様じゃない?
先程までの彼の怯え様を思い出すと共に、「ああ、そうか」と納得もする。
これだけ甘えてたら、その場所を奪われるのは嫌よね
そう結論付けると、途端に自分がお邪魔虫になった気がして、居心地の悪い思いに捕らわれた。
「じゃあ、私はそろそろ退散するわね」
そう言って踵を返すと、背中から声が聞こえる。
「あ。槙さん、ありがとう」
振り替えらずに右手を挙げると、私は部屋から出て行った。
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