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「貴女も大変だな」
「いいえ。慣れてますから」
彼の言うとおり、院長は無茶ぶりや急な予定変更などはしょっちゅうだ。
が、今までの経緯等を考えても、ここで雇ってもらっているだけでー自分の学歴や立場を踏まえてもー身に余るほど有難いことである。
その意図をもって微笑み、扉を開ける。
「うわっ」
「・・・さっきから何してたの?森兄ぃ」
特に驚いた様子もなく彼女は問う。
その呆れ顔からして、今までの会話を聞いていたのだろう。
「い、いや・・・」
「まぁ、いいけどさ」
大して興味なさそうに言うと、彼女は森君の手を取り、部屋の中央まで引っ張っていった。
「太陽。これが私の兄で『森』っていうの。二、三日滞在する予定だから、病室近くにいても心配しないでね」
「・・・ドウモ」
恐る恐る、といった具合に、太陽は頭を下げた。
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