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周の夢に胡蝶となるか、胡蝶の夢に周となるか
いずれにしても、人の生は儚く夢の時は長く続かないと、私は知る。
二人が病室からいなくなったと知ったのは、次の日の夜だった。
「槙さん!日生達、知らない?!」
「どうしたの?」
「・・・知りません、けど」
血相を変えた森君が、院長室の扉を開ける。
突然の襲来に、私も院長も呆然と彼を見た。
「部屋にいないんだよ!」
「トイレとかではなく?」
「もう探した」
「ホールでピアノを弾いてるとか」
「見たけど、いなかった」
となると、心当たりがあるのは一つだ
「屋上は?前に、二人で天体観測してたけど」
「外、雪!そんな状態で出て行く馬鹿がいるかよ?!」
彼の言葉に窓を見ると、確かに外には白いものが舞っていた。
・・・
「分かったわ。捜しましょう。槙は、各フロアのナース達に連絡して。『捜す必要はないけど、それらしき人を見たら足止め・報告するように』と」
「承知しました」
院長の言葉に頷き、私は受話器を手に取った。
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