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・・・!
そこにいた彼女は、教会に描かれている聖母マリアの絵画を思わせるものだった。
曇りガラスの向こうにビルの夜景が見えるせいか、彼女が意識のない太陽を抱いているせいかは分からないが、荘厳ささえ漂ってくるその光景に一瞬息を飲む。
そうこうしているうちに歌声が止み、生気を失った目をした彼女と目が合った。
「槙さん」
彼女の態度に、太陽がどうなったのか嫌な予感が頭を掠める。
が、そんな思考は頭の隅に置き、私はスマホを手に通話画面を出した。
「もしもし院長、槙です。二人が見つかりました。
・・・はい。特別室フロアの西階段です」
通話を続けていると、彼女が私の横を通りすぎる。
「午後十時十八分、死亡確認」
え
「ちょっ・・・」
呼び止めようと彼女を見ると、虚ろな目をした姿が視界に入った。
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