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そう言うと、彼女は出口に向かって歩き出した。
「ねぇ」
思わず、彼女を呼び止める。
『しまった』と思ったのは、彼女が振り向いてからだった。
「何?」
それでも、彼女は『いつも通り』の仮面を被ったまま私を見る。
「・・・っ」
聞けやしない。
『貴女は、太陽をどう思っていたのか』なんて。
言葉に迷っていると、彼女が溜め息を吐いたのが分かる。
「私は、さ。仕事の関係もあって、必要以上に他人に情は寄せないようにしてるんだよね」
「え」
「ちょっと前、それでいろいろあったからねぇ」
一人で納得したように頷く彼女を、私は呆然としながら見ていた。
「だから、太陽は『特別』。でも、それにしがみついてるようじゃいけないんだよね。
最期に、彼は『幸せになって』って言ったから、私はもう行くよ」
・・・
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