Storea Segreta

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「どうしたの?碧海」  エンピツをにぎったままうなっていると、お母さんが珍しそうに言う。 「学校の宿題?  珍しいわね。あんたが苦戦するなんて」  そのまま、お母さんは作文用紙を取り上げた。 「『ぼくのおとうさん』  ・・・何これ?作文?」 「そう。コンドの授業参観で読むんだって」  『だから返して』とばかりに手を伸ばすと、お母さんは溜め息を吐く。 「それにしたって、もう少し考えてくれたっていいのにね。  今年初めてだっけ?あんたの担任」  呆れたようにお母さんは言うが、それはマチガイだ。 「ホントは家族の人についてかくの。  でも、その日、お母さんはこれないんでしょ?」  だからお父さんにしてみた、とどや顔で言うと、何故かお母さんに頭を撫でられる。  ? 「そういうトコはお父さんにそっくりだわ」  お母さんが、そういう優しい顔で笑う時は、大抵お父さんのことを想っている時だ。
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