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ボクのお父さんは、ボクがお母さんのおなかにいる時に亡くなったらしい。
だけど、お父さんの話をするときのお母さんはとても嬉しそうだ。
「ねぇ、お母さん。
ボクのお父さんって、どんな人だったの?」
「んー?そうねぇ」
そう聞くと、お母さんは苦い顔で笑った。
「お母さんはお父さんに、『今の私は、貴女への愛でできてます』って言われてたわよ」
うわぁ・・・
お母さんの苦笑いの意味が、なんとなく分かった気がした。
ボクだったら、そんなこと言われたらハズかしくて困る。
「あとは、そうねぇ・・・」
お母さんは何か考え込むようにして、遠くを見た。
?
「もしよかったら、病院に来て話を聞いてみる?」
「いいの?」
「休診になってる、水曜日の午後なら大丈夫だと思うわ。
院長に聞いてみるから」
そう言うと、お母さんはボクを抱きしめる。
「ホントは私が教えてあげなきゃいけないんだけど、ね」
お母さんの顔は見れないが、声から泣いているのだということが分かった。
「いつも寂しい思いをさせて、ゴメンね」
・・・
ボクのお父さんは、自分がお母さんの傍に長くはいられないって分かっていて、ボクをお母さんのおなかにつくったらしい。
前に同じマンションのユウタと喧嘩した時『オマエのおとうさんだって、オマエがイヤになったから、出ていったんだろ!』と言われた、って言ったら教えてくれた。
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