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「すみません、離してもらえますか?
不快です」
ボクは、どんな人だとしても『大人には最低限の礼儀をはらうように』ってお母さんから言われてる。
ボクができるだけ落ち着いた声で話すと、その人は目を大きくして固まった。
「院長、こういうところも遺伝ですか?」
「そんなわけないでしょう?
槙の教育の賜物よ」
「はー・・・。
流石、碧先生の『お姫様』」
お父さんがお母さんのことを『お姫サマ』って呼んで、とても大事にしてた ってことは聞いている。
どうやらこの人は、お父さんをよく知っている人らしい。
「ボクは慎碧海っていいます。
今日は、お父さんの話を聞きにきました。
よろしくお願いします」
「初めまして。僕は登戸といいます。
君のお父さんとは、救命病棟にいた時に、一緒に働いていました。
どうぞヨロシク」
登戸先生はそう言って笑うと、ボクを手前のソファに招く。
「どうぞ」
ボクがランドセルから自由帳とエンピツを取り出すと、机の上に麦茶が置かれた。
「お母さん!」
「まったく、最初に秘書室に来なさいって言ったのに」
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