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何しろ、お母さんのことを『お姫様』と呼ぶくらいだ。
お母さんはどうか分からないけど、きっとお父さんはしつこいくらいにお母さんにベタベタしていたんだろう。
そう思って続きをねだると、登戸先生はニヤニヤしながらお母さんを見る。
「だ、そうですよ。
いい教育してますね」
「止めてください」
片手を顔に当ててうんざりとお母さんは言った。
それを見て、登戸先生は楽しそうに「ククッ」と笑う。
「昔に比べたら、ずいぶんと表情が出るようになりましたね。
碧先生のおかげですか?」
そう言われた瞬間、お母さんは泣きそうな顔になる。
登戸先生も急に真剣な顔つきになった。
「昔、君のお母さんは事件に巻き込まれて殺されかけたことがあってね。
それを、君のお父さんが命がけで守ったんだよ」
「・・・事件」
「そう。まぁ、実態は君のお父さんに恋したナースの嫉妬だったけどね」
「それって・・・」
マッチポンプ、っていうんだっけ?
どう反応したらいいか分からないでいると、登戸先生は遠い目をする。
「君のお父さんって、結構人たらしだったからねぇ。
しかもあれ、天然だからタチが悪いよね」
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