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息子の就寝後、私は枕元に彼の洗濯物を置く。
その時、『宿題だ』と言っていた作文を読んでしまったのは、いつも私が帰ってくる前には宿題を終えている彼が 珍しく机の上に原稿用紙を放り出していたからだろう。
「ーっ」
海が亡くなった後の四十九日を迎える少し前、私は自分の体に新しい命が宿っていることに気付いた。
選択肢は『産む』という一択しかなく、ある冬の日の朝に産まれた男の子を、私は碧海と名付けた。
我が子は愛おしかったし、様々な諸問題にも手助けしてくれる周囲の協力のおかげで今のところは何とかやれている。
けれど、ふとした瞬間に芽生える罪悪感は、もうどうしようもなかった。
海が碧海を私にくれたのは、私を独りにしないためだ。
「私との子供を抱いてみたい」と言っていた彼は、息子の存在を知ることなく逝った。
碧海は父親の顔すら知らない。それなのに、彼からは不満の一つも聞いたことがない。
おそらく、我慢させてしまっているのだろう。
彼らは私に惜しみなく与えてくれるが、私はそれに十分に応えられてはいないように思えて、それが時折胸の奥の焦燥感へと変わっていた。
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