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「いえ。嬉しいと言えば嬉しいんですけどね」
突如、頭の上で響いた声に驚いて顔を挙げる。
目の前の男は、先程の苦痛にゆがめた表情など嘘のように目を細めて私を見た。
「おはようございます、槙さん」
「-っ、・・・あっ・・・」
穏やかな彼の表情とは裏腹に、彼と繋がったままの下腹部の圧迫が強くなる。
「ああっ、やー・・・」
男の生理現象とやらを体中で感じながら、私は身を捩らせる。
涙目になって浅い呼吸を繰り返す私の背を、彼は優しく撫でた。
「大丈夫ですよ。怖くありません」
どの口が言うか、このサド野郎!
心の中でそう叫びながら、私の手は空をかく。
「か・・・いっ・・・!」
彼の名を縁(よすが)に、私の意識は波にのまれた。
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