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案の定出てきたデザートの杏仁豆腐を食べ終えると、陸は無言で弁当箱を突き出してきた。
『ヨロシク』
顔を見ずに呟いたヤツからは『不承不承』という空気が嫌というほど伝わってきた。
やれやれ
そんな陸を思い出し、少々憂綱な気分になりながら隣の家のチャイムを押す。
しばらく待ってみても反応はない。
・・・
念のためもう一度押すが反応は同じ。
仕方がないので、持っていた合い鍵を使って部屋に入った。
「空?生きてるか?」
一応声をかけながら自分の家とは反対の間取りの廊下を進む。
案の定、奥の部屋には電気が着いたまま茶髪の男が倒れていた。
なんでいい年した男の面倒をみてやらなきゃいけないんだろうな
そんな疑問が頭を擡げ、次の瞬間その内容に苦笑する。
今の自分達があるのは、当時十二歳だった少女が自分を犠牲にしてくれたおかげであることを思い出したからだ。
「おい、空。いい加減起きろ」
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