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未だ慣れないこの状況に溜め息を吐き、目玉焼きをトーストに乗せる。
コーヒーの香りが漂ってくる室内でそれを平らげると、目の前にカップが置かれた。
「私、コーヒー飲めないって言わなかったっけ?」
「一応カフェオレにしましたよ。それでもダメですか?」
「だったら平気かも・・・」
おずおずとそれを手に取ると、彼は嬉しそうに目を細める。
「角砂糖はいりますか?」
「・・・二つちょうだい」
「はい、どうぞ」
にやけ顔で差し出された角砂糖の袋を開けながら、彼の顔を盗み見ると、先程と同じようなにやけ顔でこちらを見ていた。
「何?」
角砂糖をスプーンて混ぜながら問うと彼は尚一層嬉しそうに笑った。
「いいえ。苦手なはずのコーヒーに挑む槙さんが愛しくてたまらないだけです」
この男は・・・
もうそれ以上は何も言う気になれず、呆れてカップに口を付けた。
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