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(俺は……。これで良いわけないじゃないか……)
暗い感情がぐるぐる渦巻く隆義だったが、きゅーちゃんに背中を押されながらエレベーターの中に入って行く。
「それでは下に参りまーす♪」
先に入っていた心が階下へ向かうボタンを押し、鉄の扉は一旦閉じられた。
体が浮くような感覚を覚えると共にエレベーターは下へ向かい……そして重力を感じた後、あっと言う間に着いたのである。
隆義はまだまだ考えているが、きゅーちゃんがその背中を押し、前を行く心に続いて行く。
「たかよし、いまはおねえさんをあんしんさせてあげんさい……それから、かんがえればええけぇ」
隆義を安心させようと、きゅーちゃんは静かに声をかけた。
悩む隆義だったが、考えは暗闇をぐるぐるとループするばかりで答えが見つからない──面倒になったのか、きゅーちゃんに促されたのがきっかけになったのか……
(……あぁ。……解った)
ため息と同時に、隆義は思考できゅーちゃんに応えた。
「お爺ちゃーん! ボクたち、ちょっと外出するよー!」
「ぶゎ?」
いきなり、心が大声で叫ぶ! それも突然立ち止まった為、隆義は顔面をモロに心の後頭部に打ち付けた!
文字通り出鼻をくじかれた隆義は、顔を押さえてよろよろと後ろへよろめき、驚いたきゅーちゃんが慌ててその背中を支えた。
「たかよし、だいじょうぶ?」
「い、痛ててて……」
何事かと思ったきゅーちゃんは、隆義の背中ごしに心が見ている視線の先を覗き込む。
隆義の方も、半分涙目で鼻を押さえながら、同じく心が見ている先に視線を向けた。
その先にあったものは、部品を外されたシ式。そして、それを取り囲む義辰と作業員たちだ。
「え、ししきがばらばらになっとる?」
「心ー! 零治にちゃんと許可もらったかー?」
「はわ!」
隆義は黙ったが、きゅーちゃんはシ式の様子に驚き、心は義辰の一言で変な悲鳴を上げる。
心は慌てた様子で隆義に振り向くと──
「ごめん、ここで待ってて! ボク、外出の許可をもらってくるよぉ!」
──そう言い残して、来た道を猛ダッシュで引き返し始めた!
「おいおい! 心、慌てて転ぶなよー!」
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