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義辰の声を背中に受けた心は「大丈夫だよー!」と言いながら、エレベーターの中へ。
隆義はきょとんとした表情で、間もなく上へ昇り始めたエレベーターと、バラバラになったシ式を交互に見る。
「なぁ爺さん! シ式をバラバラにして一体何を?」
「坊主、さっき顔見せた時に言わなかったか? 改造だよ、か・い・ぞ・う?」
義辰はそう言いながら作業用ロボットアームを操作し、それが掴んでいる物体を、隆義に見えるように指し示した。
並んで光を反射するシリンダーブロック、鈍く輝く排気管、順序良くまとめられた電気配線……。
「それ、まさか新しいエンジン!?」
「まさかじゃねー! 正真正銘、沢村重工業発動機製の新型エンジンだ。ついでに、機体を一度バラして傷や錆び具合を点検してらぁ!」
義辰からそれを聞き、隆義の後ろから安堵のため息が聞こえる。
直後、新たなエンジンは、ロボットアームにより本来それが収まる位置──今まさにバラバラになっている、シ式の背面へと動かされていった。
「よ、よかったぁ。……こわれたんじゃ、なかったんねぇ」
「錆びだらけの割には、状態は良好だ。それに、ちゃんとした防弾鋼板で作られた初期型だからなー。最も、お前さんの無茶で手が壊れたがよ!」
「う……治るってか、修理できますか?」
聞かされた事実に、隆義は不安を覚えたが──
「俺を誰だと思ってやがる! ──こちとら、工学で博士号持ってんだ。なめんな!」
義辰の口調は荒い。
荒いものの、おどけた様子で、しかし頼もしさを感じさせる強い声で、応えてくれた。
「さて坊主、俺は作業に集中させてもらうかんな!」
「あ……あぁ、了解。シ式の事を頼みます」
「任せろ」
工学博士なら、大丈夫か──隆義はそう考えながら、安堵する。
「おーい!」
その声が聞こえると共に、隆義は後ろを振り向く。
そこには息が上がりながらも陽気な笑顔を浮かべたココ──心が居た。
「正式に外出の許可を貰ったよ! ついてきて」
「……解った」
「うちも~」
爽やかな奴だな……隆義は笑顔の心を見て、そう思った。
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