第六幕 『配れらた〝愚者〟』

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 義辰の声を背中に受けた心は「大丈夫だよー!」と言いながら、エレベーターの中へ。  隆義はきょとんとした表情で、間もなく上へ昇り始めたエレベーターと、バラバラになったシ式を交互に見る。 「なぁ爺さん! シ式をバラバラにして一体何を?」 「坊主、さっき顔見せた時に言わなかったか? 改造だよ、か・い・ぞ・う?」  義辰はそう言いながら作業用ロボットアームを操作し、それが掴んでいる物体を、隆義に見えるように指し示した。  並んで光を反射するシリンダーブロック、鈍く輝く排気管、順序良くまとめられた電気配線……。 「それ、まさか新しいエンジン!?」 「まさかじゃねー! 正真正銘、沢村重工業発動機製の新型エンジンだ。ついでに、機体を一度バラして傷や錆び具合を点検してらぁ!」  義辰からそれを聞き、隆義の後ろから安堵のため息が聞こえる。  直後、新たなエンジンは、ロボットアームにより本来それが収まる位置──今まさにバラバラになっている、シ式の背面へと動かされていった。 「よ、よかったぁ。……こわれたんじゃ、なかったんねぇ」 「錆びだらけの割には、状態は良好だ。それに、ちゃんとした防弾鋼板で作られた初期型だからなー。最も、お前さんの無茶で手が壊れたがよ!」 「う……治るってか、修理できますか?」  聞かされた事実に、隆義は不安を覚えたが── 「俺を誰だと思ってやがる! ──こちとら、工学で博士号持ってんだ。なめんな!」  義辰の口調は荒い。  荒いものの、おどけた様子で、しかし頼もしさを感じさせる強い声で、応えてくれた。 「さて坊主、俺は作業に集中させてもらうかんな!」 「あ……あぁ、了解。シ式の事を頼みます」 「任せろ」  工学博士なら、大丈夫か──隆義はそう考えながら、安堵する。 「おーい!」  その声が聞こえると共に、隆義は後ろを振り向く。  そこには息が上がりながらも陽気な笑顔を浮かべたココ──心が居た。 「正式に外出の許可を貰ったよ! ついてきて」 「……解った」 「うちも~」  爽やかな奴だな……隆義は笑顔の心を見て、そう思った。
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