第六幕 『配れらた〝愚者〟』

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「~♪」  鼻歌交じりに隆義の横を通り過ぎ、心は再びメンバーの先頭に立つ。 「オープス シュ~テュムツ オ~ダシュナイッ♪ オプ ディ ゾーンヌ~ンス ラハっ♪ デ~ぁターク グリューエンハイッ オーダー アーイスカ~ル ディナっ♪」  心がついに声に出しながら歌い始めたその歌が何なのか、隆義はまだ知らない。  シ式の点検を行う面々は、そんな様子の二人(実は三人だが)を見ながら── 「誰が教えたんです? あの歌」 「俺だ。他に誰がいる?」  整備員が発した疑問に、義辰は即座に応えた。  さて、心は隆義を先導しながら、格納庫の片隅──壁に固定された、シ式にそっくりのロボットの前で止まる。 「ちょっと待ってて」  心はそう言うと、さっさとロボットの腕の上に飛び乗り、軽業師のように肩の上へと飛び上がる。 「身軽だなオイ!……って、まさか、こいつで行くのか?」 「そうだよー」  きゅーちゃんは見るのも二度目と言った所か。  初めて見た時は暗かったが、今は細部までしっかりと見る事ができる。 「これ、みるからに、ししきにそっくりね」 (……俺も、そう思った所だよ) 「だって、今は非常時だもん」  心はおどけた様子で言うと、続けて「なにがあるかわからな~い♪」と、歌った。  機体頭頂部の乗降ハッチを開き、素早く身をシートの上へ滑り込ませた心は、イグニッションスイッチに鍵を差し込む。  それが捻られた瞬間、まるで車のエンジンが始動するのと同じに、ロボットの背面からエンジン音が響いた。 「あいちゃん、こちらココ。ジャグリオン出るよ~」 [は~い。マスターからの外出許可はこちらにも届いてます~。ココちゃん、気をつけて行ってらっしゃいませ~]  あいちゃんの返事と共に、機体を壁に固定していたリフトが下り、脚部が床に接地する。  同時に、背面と胴体前面に、ガチャガチャと装備が装着されていく。 「え? なにこれ? いったいなにがおきよるん?」
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