第六幕 『配れらた〝愚者〟』

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(武器や装備を装着してるみたいだけど……)  驚くきゅーちゃんの横で、隆義は唖然としながらその様子を見るが──右手にはオートマチック式の拳銃と、腕にその弾丸が込められた弾薬ポーチ。  左腕に手榴弾のような物、そして胴体前面には大きなマガジンを備えたボディアーマーが装着され──とどめに、背中に背負った「大砲」  二つに折り畳まれたそれは、展開すれば機体の背の二倍はあろうか、かなり長い代物である。 「FCS接続。ミネベア・ナンブ三十ミリガンシステム、チェック。サミングボム、チェック。オットー・メラーラ改七十六ミリスナイパーカノン、チェック。」  心は素早い手つきでシステムが正常に動作している事を確認すると、機体の足を前に進めた。 「乗って!」 「……」  隆義は唖然としたまま動けなかったが── 「おーい、大丈夫だよー。一緒に行こー」 「ん、あぁ……そ、そうだな……」  心に促されて、隆義はジャグリオンから差し出された左手の上に乗る。  手はすかさず上に上げられ、隆義の目は心がいるコクピットを見下ろす視点となるが──内部をシ式と同じに考えていた隆義は、早速面食らってしまった。 「何だよこれ……あっちこっち画面だらけだ」 「そりゃそうだよ。シ式を近代化して新しく作ったんだから」 「俺は──どこに行けばいい?」 「ボクの席の後ろ」  心が座るシートの後ろ……隆義はそこに目を向けると、人一人が入るのがやっとの狭いスペースが視線に入った。 「狭いな……」 「ごめんね、個人用の荷物スペースなんだ」 「……仕方無ぇな」  隆義は、その痩せ気味の華奢な体格を、狭いスペースに滑り込ませる。 「ま、まって~」  きゅーちゃんも、慌てながら隆義の背中を目がけて飛び込んだ。  直後、ハッチが閉まり、ロックが閉じる音が響く。 「しっかり掴まっててね。……あいちゃん、行ってくるよ~」 [格納庫乗降ランプ開きまーす。お気をつけて~]  心の頭上越しに、隆義は周りの画面に目を向けた。
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