まんじゅうこわい

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 俺は同じ部の吉崎玲奈と、どことも知れない洞窟に閉じ込められていた。  ここから抜け出す方法が一つだけあるのだが、そうするには俺の秘密を吉崎に明かす必要がある。  さて、どうしたものか。 ---  数時間前のことだ。コーチの運転するバンで遠征先に向かっていた俺たちは、山道の路肩で休憩していた。  小便をするのに目隠しになる場所を探していた俺は、山側の崖に、草むらに隠れて横穴があるのを発見した。中で用をたそうと横穴を少し進むと、吉崎が追ってきた。 「永江くん、コーチがそろそろ出発しようって……何これ? 洞窟? おもしろーい」  オシッコしたいんだけど、と言いかけて振り向いたその時、地面が揺れた。地震だ! 「きゃあ!」  しゃがみ込む吉崎越しに、コーチ達の乗ったバンが崖下に転落していくのが見えた。道路が崩落している。  洞窟内の方が安全か? と思った次の瞬間、轟音と共に巨大な岩が落下し、入り口を塞いでしまった。  俺と吉崎は2人きり、洞窟内に閉じ込められたのだ。 ---  その後、パニックに陥った吉崎をどうにか落ち着かせ、状況を確認した。  持ち物は俺がポケットに突っ込んでいた携帯のみ。吉崎は荷物は当然のこと、ポシェットも車に置いたままだったという。  助けを呼ぼうにも、電波は圏外でどこにも繋がらない。携帯のライトを使って洞窟の奥へ進んでみたが、数メートルのところで行き止まりだった。幸い、壁面に水が染み出している場所があったので、これをすすればすぐに死ぬことは無いだろう。  救助は来るだろうか?  崩落で道路が分断されただろうから、すぐには無理だろう。それに、バンが転落した事に気付けば、そちらの対応が優先されるはずだ。反対側に洞窟があり人が逃げ混んでいるとは誰も思うまい。  外部からの救助が期待できないとすれば、この状況を打開する方法はただ一つ。俺の能力を使うことだ。
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