まんじゅうこわい

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 俺は石を受け取ると、意識を集中した。 ぱふぉ  気の抜けた音と共に、石はあるモノに変化した。それを吉崎に手渡す。吉崎はソレを撫で回しているようだ。 「これって……おまんじゅう?」 「そう。正解。食べていいよ。俺は手に触れた物をまんじゅうに変える事ができるんだ」 「……。」  返事がない。驚いたのか、イタズラと思って呆れているのか。 「とりあえず、それ食べてくれよ。食べないと次のまんじゅうが出せないんだ」  最初は何が起きているのか分からない、といった様子だったが、落ちている石を拾ってはまんじゅうに変えて、俺と吉崎で交互に食べている内に現実を認める気になったようだ。 「すごい……けど、なんで?どうしてこんな事ができるの?」 「自分でもわからないんだけど、爺ちゃんがまんじゅうを好きでさ。爺ちゃんにまんじゅうをあげたいな、って思ってたらある日できるようになってたんだ」 「おまんじゅう以外の物にはならないの?」 「まんじゅうだけなんだ。それに、出したまんじゅうを食べるか、水に溶かすか、燃やすか、とにかく無くしてしまわないと次のまんじゅうが出せない。千切ったり潰したりするだけじゃダメなんだ。さして役に立たない能力だよ」 「そんな事ない、十分すごいよ!」  吉崎の声に元気が出てきた。元気なやつだとは知っていたが、度胸も座っている。こんな時にずっとメソメソされたのでは堪らないので、こちらとしても助かる。 「これで食べ物の心配はなくなったね」 「それだけじゃない。この力でここから脱出する」  俺は洞窟の入り口の方へ向かい、そこを塞いでいる岩に手を付き、最大出力で能力を発揮した。 ぱふぉ  岩の一部が変質し、バレーボール大のまんじゅうが出現した。 「このサイズが1度にまんじゅう化できる最大の大きさなんだ。これで徐々に岩をまんじゅうにして、穴を空ける」 「すごい!けど……それ食べないと、次の穴は開けられないんだよね?」 「ああ。だからひたすら食うぞ」 「うぇ……」  悲惨な状況でも、希望があれば人は案外明るくいられるらしい。吉崎は体重が~体重が~とボヤきながらも、俺と一緒にまんじゅうを食べ続けた。  俺は、もうこんなに穴が開いた、きっと脱出できると励ましつつ、この能力の事は絶対に秘密にしてくれと繰り返し頼んでいた。
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