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奇妙な島
木村拓哉は三河湾に浮かぶ奇妙な島に来ていた。その名も佐久島。
あっ、キムタクとは別人だからヨロシコ。
愛知に来て2日目、昨日は名古屋城に行った。
木村はバイオメティクスの研究をしていた。水のなかでも接着する薬品を開発した。
岩礁に張りつくイガイやムラサキガイは、自ら分泌した接着剤によって張りついている。
イガイは足糸っていう細い脚を伸ばし、自らの体を固定させる。先端にある接着円盤からタンパク質を分泌する。タンパク質はアミノ酸が結合することで形成される。
スマホにニュースが届く。
《京都の寺田屋前で放火犯射殺される!犯人未だ捕まらず!正義の味方か?それとも……》
どうでもいい、このタンパク質はカテコール構造ってものを持ち、様々な物質と水素結合したり岩に含まれる金属と結合する。
木村はモルモットとして利用する、フジツボを探していた。
長らく派遣をしていたが、どーゆーつもりか知らないが正社員になることが出来た。
これで一生安泰だ。
『このっ、ていたらくが!』
親父に毎晩のように叱られた。
派遣なんて、その程度しか思われちゃいない。
フジツボをバケツに放り込む。
くさっ!生臭い!同じ木村拓哉でも、こうも違うものか?あっちは何十億って稼いでるってのに、ムカつくんだよ!
昔、盲腸になって病院に行ったんだけどさ?
受付のネーチャンが俺の顔を見るなりこう言った。「何だよ、キムタクじゃないの?」
失礼しちゃうよ!
大学の同期で鷹島ってのがいるんだけど?卒業以来、音信不通だ。
原始人みたいな男が通り過ぎる。
「モンゴリアン、モンゴリアン」
意味不明なことを連呼してる。こえーな。
佐久島には東港と西港がある。
木村は東港近くにある岩場にいた。
島か、クローズドサークルだな?秘宝島、獄門島、墓場島……挙げればキリがない。
フジツボ回収を終えたので、飯にしよう。
スマホが壊れて地図が使えない。文明が進歩すると、コミュニケーションって激減するよな?
口喧嘩を出来るくらいの友達なんて、派遣になってからは1人もいない。
さみしい。海鳥がこっちを見ている。
「大丈夫だよ?僕がいるじゃんか」
そう言っている気がした。
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