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剣士さんに起こされて僕達はまだ日が登らないうちに町へ向けて出発する。
着いた場所は閑散とした所だった。
僕が住んでいた場所とは違い、桜の木もなければ枯れた木が民家の隣に点々とあるだけで、辺りは霧に包まれていて前が見えにくく歩きにくい。
剣士さんは、隅の民家に迷わず入って行く。
僕もその後をついて行くと、家々からヒソヒソと聞こえない声で僕らを見て何かささやいている民家の人達が見えた。
僕は、気になり立ち止まり民家の人達を見回す。
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…
聞こえないが、何か不気味に感じる…
周りが僕だけを見て、何かを囁いているのが恐ろしく感じてくる…
「何をしている。」
なかなか後をついて来ない僕を剣士さんは民家の扉から顔をだし、不機嫌そうに僕を呼ぶ。
「あ、ご…ごめんなさい…💦」
慌てて剣士さんの元に駆け寄り、一件の民家に入る。
民家の中は外より暗く、足元があまり見えない。
「おぬしか…」
うっすらと人の影が現れるが、顔がよく見えない。
声からして、かなりのご老人だ…
「刀を見てもらいたい。」
剣士さんは一本刀をご老人に渡す。
「おぉ…見つけたのだな…」
「やはり、そうなのか?」
「刀がおぬしに渡したときよりも強くなっておるのが証拠じゃ…そうか…そなたが…」
ご老人らしき人影が僕の方を向く。
「僕が何か…?」
「いや…なにとぞ気をつけなされ…」
「はい。ありがとうございます。」
深々と頭を下げると、剣士さんは立ち上がり民家を出て行ってしまった。
慌てて僕も剣士さんの後を追うように民家を出て行く。
「あの人、僕のこと知ってるみたいでしたね。」
「気のせいだ。」
「でも…」
「お前が気にすることではない。」
町を離れ、剣士さんに先ほどの民家のご老人のことを尋ねてみるも詳しいことは教えてくれなかった…
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