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いつか…自分の過去から縛られずに人は生きてゆけるのでしょうか…?
『母さん。どうしたの?』
『……明菜。母さんがいなくなっても…ちゃんと生きていくのよ。それが…あなたの使命なのだから…』
『母さん?言っていることがよく分からないよぉ…』
『………』
寂しくそして悲しく微笑む母さんの顔を見たのはあれが初めてだっただろうか…
桜が咲き誇る春…
「今日もまた外にでれないのかぁ…」
ここ、斎趙(さいちょう)町に今日も裕福な家から抜け出そうと企んで失敗した青年が一人…
「明菜様。体の具合はどうでしょうか?」
「あ、大丈夫です。」
「明菜様。今後はあのようなことをなさらぬようにと当主様がおっしゃられておりました。」
「はい…十分気をつけます…あ、あの…それで部屋からいつ出してもらえるのでしょう?」
「用足し以外、2日間は部屋から出てはいけないとお申しつけがございました。」
「……分かりました…」
召し使いが部屋から離れていく足音に耳を傾けながら明菜はため息を吐く。
「はあぁ~…」
いつになったら出してもらえるのかな…もう…このまま死ぬまで出してもらえないのかもしれない…親が決めた相手と結婚して、このまま一生…外に出してもらえないのかも…
小さい頃から体が弱くよく病気がちだった明菜を心配してか父親は明菜をずっと家の中から出させないよう召し使いに見張らせていた。
僕だって…もう、17歳なのに…もう…大人なのに…
容姿がまだ子供っぽいのがいけないのだろうか?体が弱いのがいけないのだろうか?次々と沸き起こる疑問に頭がいっぱいになる。
病弱と言っても歩いて倒れるほどやわな体ではない…母親が生きていた頃は明菜が病弱でもよく三人で散歩に行ったのに…
今は散歩もさせてくれない…学校にも行かせてくれない…
学校の変わりは専属の家庭教師…二人で行う授業はつまらない…
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