美しき青年

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「明菜様。先生がお見えになりました。」 「あ、はい。」 しばらくそんなことを考えていたら家庭教師の先生が来た。 いつもと変わらない授業のやりとりをして、今日もまた宿題を出された。 「面倒くさい…」 召し使いさんがいれてくれたお茶をすすりながら窓の外を見る。 僕の部屋は裏部屋みたいな感じで、裏に咲かれている桜が夜になると軽くライトアップされるのだ。 夜桜…とでも言うのだろうか…僕の少しの楽しみはこのライトアップされた桜を眺めること。 「くしゅん。ちょっと寒くなってきた…今日はこの辺でやめておこう…」 開けていた窓を閉めて、僕は布団に入る。 いつもと変わらない日常…変わらない、変わらない… きっといつかとてつもなくこの日常を変えてくれることが起きるのではないか。 外に出れなくなった日からそんなことばかり思っていた。 そんな考えがまさか現実になろうとはこの時僕は全然思っていなかったんだ… 「ここか…」 桜の木の上で一人の剣士が呟く。 髪が腰あたりまであり、整った顔立ちは月明かりにはよく見栄えていた。 「当たりだったら連れ出すまで。」 カーテンの隙間から見える明菜の寝顔を見ると剣士は口角をつりあげる。 「しばらく様子を見ようか…明菜。」 「ん…」 あれ?気のせいかな…? 誰かに呼ばれたような気がしたんだけど… カーテンの隙間から日が差し込んできて朝だと知る。 「きっと、召し使いさんが起こしに来てくれたんだね。」 軽く伸びをすると、障子が開き召し使いが朝食を運んでくる。 「あの…自分の部屋から動かずに食べるのはよくないと思うんですけど…」 「でしたら、もう二度とあのようなことがなければよいのですよ。」 「あ、はい…」 言い文を受け入れてもらえず悲しくなる。
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