旅の始まり

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《目覚めたか…》 「はい。楡魔(ゆま)様。」 《我…の…》 「楡魔様。この私、徠が始末して来ましょう…」 《始末は…》 「分かっています。あの男だけにしますよ。」 《…………》 目覚めた場所は、どこかの森だった。 「ここは…?」 パチパチと燃えている焚き火をしばらくぼーっと見つめているうちに、記憶が蘇ってくる。 「そうだ…!僕、気絶させられて…剣士さん…は?」 周りを見渡すが、いるのは自分1人だけ… 「困ったな…」 あのとき、何かに導かれるような感じがして剣士さんの手をとったのだけれど… お腹に鈍い痛みがはしり、少しお腹をみると青タンができていた… 「やっぱり、僕を殴ったのは剣士さんなんだ…」 でも、どうしてこんなこと…? 普通に言ってくれれば、僕逆らったりしないのに… 「目が覚めたか。」 遠くから聞こえてきた低い声に顔を上げると、自分を気絶させた張本人が姿を現す。 「あ…あの…僕…」 「家にはもう帰れん。」 質問の隙を与えないとばかりに明菜にそう告げる。 やっぱり、もう家には帰れないんだ… 嬉しいけど、どうせなら一言さよならを言っておきたかったなと思った。 「あ、あの、一体ここはどこなんでしょうか?」 「言ってお前が分かるとでも?」 「そ、それは…その…」 言われても分からないけど、言ってくれないとなんとなく不安だ… 明菜の心情を知ってか知らずか剣士は口を開く。 「この先を歩いたら町に出る…」 「じゃあ、今はその途中なんですね。あ…僕重たかったのに…疲れませんでしたか?」 「別に…」 「本当ですか?」 「あぁ。」 「よかった…」 ほっとする明菜の顔を見て、剣士は呆れる。 こいつ…バカじゃないのか? いきなり気絶させられて、勝手にこんな場所まで連れて来られて、普通自分を連れて行った相手を心配するか? お人好しにもほどがある… これじゃあ、先が思いやられるな…
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