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──それでも、時間は残酷にも進んでいく。
星の川は徐々に大きくなってきて、タイムリミットが来たことを淡々と告げる。
それを見て、僕は出会った時と同じくらい……、いや、それよりも強く彼女を抱きしめた。
もう二度と離したくなかった。
また一年、彼女のことを想いながら待つことを想像するだけで胸が痛くなった。
僕の腕の中で彼女が微かに震えていた。
「──もう、行かなきゃ……」
僕は自分の感情を押し殺し、そう小さく呟いた。
彼女はもっと小さな声で言った。
「……もう少しだけ。もう少し、一緒にいたい」
「………」
「……怖いの。もしかしたら、会えるのは今年が最後なのかもしれないと、想像してしまう。そんな残酷な想像をしてしまう私を、いつかあなたが迎えに来てくれなくなる日が来そうで……怖い……」
僕の服を掴む彼女の手に、ぎゅっと力が込められた。
ああ、──離れたくないのは彼女も同じなんだ。
「そんな日は来ないよ」
僕は彼女の体からそっと離れ、優しく肩を抱いた。
「来年も、再来年も、この先もずっと、君を迎えに来るよ。『最後』なんて永遠に来ないよ」
「……うん」
「僕はずっと、君を愛してるから」
「──私も、愛してる……っ」
彼女の目から、透明な涙がボロボロと溢れた。
それは彼女の頬から顎へと伝い、ポタリと下に吸い込まれる。
涙が落ちたところには小さく波紋が広がっていて、それは、星の川がもうすぐそこにあるのだということを知らせていた。
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