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01 浪漫
…――ロマンティック。
日本語では浪漫と書く。
てかっ。
イライラが止まらんッ。
だから、現実逃避で浪漫というものを考察してみる。
浪漫とは、他人が入り込む余地のない世界で繰り広げられる幻想という名の魅惑。
俺にとっては、可愛い彼女とのチョメチョメタイム。
今、まさに浪漫を感じる為、彼女と二人で満天の星空と煌びやかな夜景が見られるスポットに向かっている。話を持ってきたのは彼女の方。曰く、そのロマンチックポイントは雑誌でも紹介された素晴らしきロマンティックさであるらしい。うむっ。
ただし、女が言う浪漫と男の浪漫は大きく違うがな。
などと、密かにも、ほくそ笑んでいた。
今、この時までは、な。
阿呆だな。まさに阿呆。
兎に角、
そこは若いカップル御用達のスポットらしい。程よく田舎で、街灯などもなく空気も澄んでいて、まるで星に手が届きそうな距離感で星空を楽しめるらしい。無論、話をもってきた彼女の瞳も潤み、期待に満ち溢れてキラキラしていた。可愛いくも。
そんな彼女の綺麗な瞳を見つめて……、
まさに星屑の欠片はこれだ! なんて思ったもんさ。
いまさっきまではなッ。
天気は晴朗。雲一つない月夜。星空を見上げるにはうってつけ。当然、月明かりはいい感じで俺達の車を照らし出している。もちろんロマンティックスポットは雑誌に紹介されるような浪漫が約束された場所。最高のシチュエーションになるはず。
だった。
しかし、
あと、もう少しで満天の星空の下、彼女と浪漫できると期待していた俺が阿呆だった。むしろ雑誌に紹介されるほどの極上なロマンティックスポットなのだという事を、もっと深く考察すべきだった。今、感じている不覚を覚えない為にもな。クソ。
俺は忌々しくなりタバコに火をつける。
「マジか。キレるぞッ?」
「ごめん」
言葉少なく答える彼女。
俺は如何ともしがたい怒りで、彼女に配慮もできず、無言でタバコを吸い続ける。
スパッ。
スパッ。
と……。
二、三服したあと直ぐ灰皿でもみ消す。
クソ、まったくイライラが止まらんぞ。
「って、動かねえのな。一体、何分、待てばいいんだよ。山の中だから自販機なんて気の利いたもんはねぇしよ。これでタバコが切れたら、マジ、キレるぞ」
…――チィッ! 人で溢れかえるロマンティックスポットまで自然渋滞25キロ。
クソがッ。雑誌に紹介されちまったらこんなもんか。
浪漫って、一体なんだ?
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