ラジオ体操

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ラジオ体操

 近所に町内の公民館があるのだが、学校が夏休みに入ってから、そこでラジオ体操が行われるようになった。  子供の頃は、眠いしだるいしで嫌て仕方のない行事だったが、部活の朝練などで早起きが常となった今は、朝からラジオ体操をするくらいお手の物だ。  学生時代はずっと運動部に所属していので、社会人になったからは若干運動不足だ。だから体を動かすいい機会だと、こっそりラジオ体操に参加した。  さもいやいや集められた子供達とは裏腹に、後ろの方には、非正規参加のご近所さん達がそこそこいる。その中に紛れ、俺は久々のラジオ体操をこなした。  体操が終わると、集まった子供達が係の人の元に向かった。カードを差し出し、参加証明のスタンプを押してもらっている。それを懐かしく見ていると、ふいに見知らぬ中年男性が声をかけてきた。 「参加者の方ですよね? こちらをどうぞ」  そう言って、すでに捺印されたスタンプカードを手渡してくる。  昔は子供達だけがカードを手にしていたが、今は、集まった人全員にスタンプカードを配るシステムなのだろうか。  拒む理由はなかったし、どうせ毎日来るつもりだったから、むしろこういった品があると励みになる。そう思い、俺はスタンプカードを受け取った。  翌日から、俺はスタンプカード持参で体操に参加した。  ラジオ体操が終わると、係の人の所に並び、スタンプを押してもらう。ただ、俺を含めた大人の参加者達は、子供達とはスタンプを押してもらう場所が違うのだ。  最初は単純に、捺印場所を分けることで時間の短縮を図っているのだと思っていたが、子供と大人は決して同じ列には並ばない。こちらの方が人数が少ないので、必然的に捺印場所が空くのだが、それでも子供達は向うの列に並んでいる。  もしかしたら、大人と子供では押してもらえるスタンプが違うのかもしれない。漫画のキャラとかのスタンプなら、子供は当然あっちに並ぶだろう。  そう思えば列の長さの違いも気にならなくなり、俺は自分のカードにスタンプを押してもらうと、子供の長い列を尻目にさっさと帰るようになった。  こんなふうにラジオ体操に参加していたのだが、半月ばかりが過ぎたある朝、俺は会社の飲み会の影響で二日酔いになり、体操への参加を断念した。  皆勤賞が流れてしまったと、翌日は、かなり悔しい気持ちで公民館に足を向けた。
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