chapter Ⅰ

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「それでは新郎、新婦、ご入場です。みなさま盛大な拍手でお迎えください」 司会のよく通る声と共に、腕を組んだタキシード姿の阿藤と、ウエディングドレス姿の心が、開かれた扉から入ってきた。 出席者が口々に「おめでとう」や「お似合いだよ」などの言葉をかけ、その度に2人は少しハニカミながら歓声に応える。 場内はまさに幸せムードに満ち溢れていた。 二人は社内恋愛で、さらに同期入社であった。この期は、男は阿藤を入れて6人、女は心1人の計7人だったが、同期の仲はとても良かった。 阿藤は唯一の女性同期である心と結婚したわけだが、残りの5人は全員彼女がいると言っていたので、恨まれてはいない。 なので、もちろん5人も式に来ている。 新郎は5人が座るDテーブルをちらりと見た。 皆、笑顔で拍手をしてくれていた。阿藤はとても温かい気持ちになった。 だが、このとき、笑顔を浮かべた同期達の目が、一点の晴れ間もなく曇っていたことに、阿藤は気付いていなかった。
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