第8話 エレジー

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「インターフェイス越しだが、俺にも確かに聞こえた。あの時、あいつはお前に“ありがとう”って言ったろ?」 坂木は辰巳をじっと見た。 「その言葉だけ忘れずにいろ。それがすべてだ」 辰巳はそれだけ言うと足早にドアを開け、階下へ降りていった。 まぶしい光の中一人取り残された坂木は、ゼンマイの切れた人形のように、しばらくその場に立っていた。 「俺は何も言ってやれなかった。……何も言ってやれなかったんだ」 坂木は手のクロスをそっと胸ポケットに戻すと、その上からギュッと握りしめた。 ―――あいつは「ありがとう」と言ってくれたのに。
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