第9話 夢の終わりに

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坂木はゆっくりともう一度振り返った。 まだ心臓を掴まれたような、心を包み込まれたような不思議な感覚が消えない。 この世に魔法と言うモノがあるなら、今、自分はその魔法にかかったのだ。 そう思った。 さっきまで自分と話をしていた少女の姿はもう無かった。 ふいに空を見上げる。そこに居るはずもないのに。 まだ17、18歳くらいだろうか。 OEA第5支部から出てきた坂木はその少女と鉢合わせる形になった。 華奢な体つきの可愛らしいその少女は坂木を見るなり、まるで雷に打たれたように目を丸くさせて体を硬直させた。 坂木は辺りを見回したが他に誰もいない。彼女が見つめているのは、まぎれもなく坂木だ。 少女の反応に驚いて坂木もじっと怪訝そうに少女を見つめ返した。 そのままかなりの間があったように思った。 少女は少し声を震わせながら、やっと決心したという表情で坂木に言った。 坂木の名と、そして今も胸を締め付けられるほど悲しい記憶を伴った昔の相棒の名を。
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