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その激しい語気に坂木はハッとして少女を見た。
少女は悲しげな涙を浮かべたまま真っ直ぐ坂木を見つめていた。
「彼がどれだけ貴方を大切に思っていたか、分からなかった? 自分の命よりもずっとずっと大事だった。大好きだったの。一緒にいてわからなかったの?」
「……」
坂木は少女から目を反らすと車止めからゆっくり立ち上がった。
そして何かに怯えるように一歩、少女から体を離した。
少女はじっと坂木を目で追う。
「そんな資格は俺には無いんだ」
「どうして?」
「ウソをついていた」
「……え?」
坂木はうつむいたままゆっくり息を吸った。
自分の声が震えているのが分かったが、かまわず語り始めた。
ずっと閉じ込めていた本当の想いを。
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