第9話 夢の終わりに

5/11
前へ
/143ページ
次へ
その激しい語気に坂木はハッとして少女を見た。 少女は悲しげな涙を浮かべたまま真っ直ぐ坂木を見つめていた。 「彼がどれだけ貴方を大切に思っていたか、分からなかった? 自分の命よりもずっとずっと大事だった。大好きだったの。一緒にいてわからなかったの?」 「……」 坂木は少女から目を反らすと車止めからゆっくり立ち上がった。 そして何かに怯えるように一歩、少女から体を離した。 少女はじっと坂木を目で追う。 「そんな資格は俺には無いんだ」 「どうして?」 「ウソをついていた」 「……え?」 坂木はうつむいたままゆっくり息を吸った。 自分の声が震えているのが分かったが、かまわず語り始めた。 ずっと閉じ込めていた本当の想いを。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加