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常用灯の白い光が照らす廊下は、〈エデン〉構造材である黒い金属が剥き出しになっている。
通路は、大人がそれなりの配慮なしにはすれ違えないほど狭く、天井も大柄な者が手を伸ばせば簡単に届いてしまうほどの高さしかない。
これを窮屈と感じるかどうかは、その人物がどこのコロニーで生まれたかによる。ノオトは懐かしいと感じていた。
「あっ、ノ、ノオト。おはようございますッス!」
扉のすぐ横に立っていた少女が、ノオトを見るなり壁から弾かれるように前に出た。
ノオトとよく似た、肩を剥き出しにしたフィットスーツに、油で汚れたズボン姿。赤茶けた髪を肩の上で切りそろえていることについて本人は、
「仕事柄、髪なんか伸ばせないッスよ」
とブーブー言ってはいたが、フットワークの軽い彼女の性格によく合っていた。
「おはようカナン。どうしたんだ。扉にロックはかけてないぞ。用があるなら、入ってくればいいのに」
ノオトは少女の名前を呼んだ。この〝村〟でノオトとは唯一歳の近い人間だ。
「うっ、うん。ま、まあ、そうなんッスけどね……」
カナンは急に顔を赤くしてうつむいた。
「こ、これ、メンテ頼まれてた銃とナイフッス」
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