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じいちゃんが死んだ。
昨日の夜ぽっくりと逝ってしまった。
ばあちゃんの話によればいつも通り畑仕事をして、いつも通り晩ごはんにケチをつけて、いつも通りの時間に寝て、次の日の朝じいちゃんはなくなっていたそうだ。
ばあちゃんは泣いていなかった。かあちゃんも泣いていなかった。伯父さんは泣いていた。
「ヒロシよう。」
今年の夏休み、じいちゃんちに遊びに行った時。
一人っ子の僕は一人で宿題しているのがつまらなくなってじいちゃんが趣味でやってる畑まで散歩に行った。
都会っ子の僕にとっては瑞々しい畑の青さが目に新しかったし、そこらへんの用水路でさえいつまででものぞき込んでいられた。
道草を食みながらようやく畑につく。
じいちゃんは座りこんで煙草を吸っていた。
僕の姿を見つけると少しバツが悪そうに笑った。
僕の名前をおもむろに呼んだ後、じいちゃんは、
「ばあちゃんには秘密だぜ。」
と言って、いたずらっ子みたいに笑った。
じいちゃんは、ばあちゃんとかかあちゃんにタバコを止められていたらしい。
畑に来てはこっそりと吸っていると言った。
じいちゃんは家のリビングでムッとした顔でテレビを見ている怖い人、というイメージしかなかった、僕にとってはその笑顔がなんだか嬉しかった。
そうして僕はじいちゃんの秘密の笑顔に無言でうなずいた。勢い余って二回三回とうなずいた。
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