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鬱蒼とした木の落とす影が、道の両端に本物の闇を作っていた。
舗装もされていない道の、ところどころにできたぬかるみが、無慈悲な月の光を悲しげに反射している。
ぬかるみというのは、まるで雨の死体のようだ。
「ねえ、どこまで行くのよ」
ナミの声が、心細げになっていた。
つい先ほどまでは、先月に執り行われた連続殺人鬼の死刑について、熱く持論を展開していたのだが、話がひと段落したところで、ようやく自分がどこにエスコートされたのかが気になってきたようだ。
急激に不安が膨れ上がっているのだろう。
月よりも青ざめたその頬は、陶器のように強張っている。
処刑方法の稚拙さを熱っぽく批判していた弁舌は、元通りに温度を失ったかのように落ち着いた。
「もう少し、すぐそこだよ」
オレは慎重に笑顔を作って応える。
もうすでに十分不審がられてはいるが、ここで同行を拒絶されては面倒だ。
オレには秘密の目的がある。
そのためには、彼女に途中で逃げられるわけにはいかない。
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