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「すぐそこって、片場さん、さっきからそればっかり。
わたしもう歩くの疲れちゃった」
駄々を捏ねているだけのようだが、ナミの目は真剣な光をたたえていた。
その目がこちらの様子をじっとうかがっている。
「疲れたんなら、おぶってあげようか?」
「いいわよ。
それよりお腹も空いてきたし、先に塚町によって食事にしない?」
「お腹空いたって、まだこんな時間だよ。
まあ食事のこともオレが考えてあるから、任せてくれよ。
本当にもう着くからさ」
そう説得するも、ナミはとうとう立ち止まってしまった。
「こんな人も住んでなさそうな場所に、食べるトコなんてあるはずないでしょっ!?」
まくしたてる金切り声。
だがそれもここでは暗闇に吸い込まれていくばかり。
オレの他には聞くものもいない。
それにしても感情の振れ幅の大きい女だ。
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