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中間テストが終わって、下校ラッシュの時間を迎えた聖山高校。教室から生徒たちが我先にと一斉に飛び出していく。
高校二年生の奥月星河は、ひとつ大きな伸びをすると、肩にひょいっと鞄を担いで、隣の席の袴田大地に声をかけた。星河にとって、大地は中学時代からの大親友だ。
「大地、俺たちも帰ろうぜ」
「わりぃ。今日ちょっと文化祭のことで先生に呼ばれてるんだわ」
大地は伸ばした片方の手の平を、自分のおでこに当てるようにして謝った。
「マジかよ。どのくらいかかんの?」
「ちょっとわかんねえし、長引きそうだから今日はふたりで先に帰っててくんね?」
「わーったよ。じゃあ美笹には俺から言っとくわ。ほじゃまたなー」
「おうー」
星河は生徒たちの川の流れに乗りながら校舎を出た。校門までの道のりにある大きな木の下で、ベンチに座って読書をしている女生徒を見つけた。星河が飛び跳ねながら呼びかけたのは雅量美笹だ。彼女もまた、幼い頃からの下校仲間だ。
「あれー、大地は?」
美笹は頭を左右に傾げて、腰までもある自慢の髪を風に光らせた。
「文化祭のことで担任とデートだってさ」
「えへっ、男同士で?なによそれー、私たちを差し置いて楽しんじゃってさー」と美笹は不服そうな顔をして、よだれをじゅるりと拭くまねをした。
「そう腐れるなって」
「何して待っとく?」
「いや、先に帰ってくれってさ」
「そっかー、ならば私たちもデートがてら帰りますかあ」
「ういうい」
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