毛玉猫が君を呼ぶ

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 ギリギリだが遅刻もせず、資料も準備することが出来た。会議のほうもなんとか滞りなく終えることが出来た。完璧だとは言えないが、やるべきことは出来ただろう。  ただ、雨の中ベンチの下で雨宿りをする子猫の姿が、頭の片隅にこびりついていたことは言うまでもない。罪悪感が胸をギュッと締め付けていた。  仕事が終わる夕方には、そんな雨もなかったことのように青空が広がっていた。茜色の夕陽が眩しく照らしつけてくる。なんとなくだが、人でなしと夕陽に言われているような心持ちがした。そんなはずはないのに。胸の奥に淀んだ澱が沈んでいく。  早いところ、子猫のところへ行って安否を確かめたい。最悪の事態になっていたらどうしようとの思いが胸を締め付けて苦しくなる。  運良く今日は残業もなく、定時で帰れそうだ。早く公園に行って確かめるべきだ。今更遅いかもしれないが、そうしないと言う選択肢は浮かばない。
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